債務整理を弁護士に依頼すると督促が止まる「受任通知」と注意点

多額の借金を背負ってしまい返済が滞ってしまった方にとって、一番の悩みは債権者(借金の返済を請求できる人)からの督促ではないでしょうか?

督促が続くと日常生活や仕事が手につかず、精神的に追い込まれてしまうという方も少なくありません。

しかし、債権者からの督促を止める方法があります。それは、弁護士に債務整理を依頼し、弁護士から債権者に受任通知を送達してもらうことです。

この記事では「受任通知」「受任通知の効力」「弁護士に債務整理を依頼する際の注意点」について解説してまいります。

債権者からの督促を止める「受任通知」とは

まず、受任通知の意義、受任通知をした場合、どういう効果が発生するのかについて解説します。

受任通知とは

受任通知とは、依頼者から債務整理を委託された弁護士、弁護士法人、司法書士、あるいは司法書士法人が、債権者や債権者から借金回収を委託された回収業者に対して、依頼者から債務整理手続の依頼があったこと、あるいは債務整理に必要な手続をとったことを書面などで通知することをいいます。

「介入通知」あるいは「債務整理開始通知」と呼ばれることもあります。

受任通知の効力

受任通知は、債権者については「貸金業法21条1項9号」、回収業者については「債権管理回収業に関する特別措置法18号第8項」を根拠としています。

そして、貸金業法21条1項9号によると、受任通知を受けた債権者は債務者又は保証人に対して、

  • 電話をかけること
  • 電報を送達すること
  • ファックスを送信すること
  • 債務者又は保証人宅を訪問すること

の行為を行って借金の督促を行うことが禁止されます。

また、上記特別措置法18号第8項によると、回収業者は①、④の方法で借金の督促を行うことが禁止されていますが、実際は②、③も行われないのが実情です。

また、貸金業法では禁止行為に違反した債権者に対して「2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、あるいは併科」の刑事罰を科すとの規定を設けています。

また、刑事罰とは別に、貸金業者の登録の取消し又は一定期間の業務の停止とすることができる旨の規定も設けています。

他方、回収業者に対する刑事罰の規定はありませんが、やはり営業許可の取消し等をすることができる旨の規定を設けています。

以上より、受任通知によって、上記のような法的な拘束力が発生しますから、①から④の方法による借金の督促は止まります。

弁護士に依頼する際の注意点

弁護士に債務整理を依頼する場合の注意点は以下の5点です。

受任通知の効力が生じるのは貸金業者と回収業者

受任通知の法的効力が生じるのは貸金業者と貸金業者から借金回収の委託を受けた業者のみです。つまり、買掛先、取引先、知人などの一般の債権者に対しては受任通知の効力は生じません。

しがって、これらの方が受任通知後に債務者に対して借金の督促を行ったとしても違法ではありません。もっとも、大部分の方は受任通知後の督促は停止してくれます。

信用情報機関の信用情報に事故情報として登録される

いわゆる「ブラックリスト」に登録されるということです。

受任通知された債権者としては、「債務者は約束通り返済してもらえない人なのだろう」と判断し、信用情報に事故として登録するのです。

信用情報に登録されてしまうと、一定期間はクレジットカードを作ること、債権者から新たな借入れをすることなどが難しくなる場合があります。

債権者の訴訟提起を止めることはできない

貸金業者が訴訟提起の意図は、債務者に心理的プレッシャーをかけて返済を迫ることです。

訴訟を提起するということは、訴状が自宅に送達されるということですから、身内に多額の借金を抱え債務整理していることがばれる可能性があります。

また、裁判で貸金業者が勝てば、債務者の給与を差押えることも可能となります。貸金業者はこうした影響を考慮して訴訟提起してくることが考えられます。

保証人、連帯保証人へ督促が行く

債権者へ受任通知を行うと、債権者は債務者へ借金の督促を行うことができません。したがって、債務者に保証人、連帯保証人がいる場合、債権者はこれらの方に借金の督促を行います。

保証人、連帯保証人が債権者からいきなり借金の返済を迫られてしますと、これらの方との関係を悪化させ今後の協力を得られなくなってしまうおそれもあります。

弁護士に債務整理を依頼する前に、一度、保証人、連帯保証人に相談しておくほうがよいでしょう。

金融機関の口座が凍結される

金融機関に対して借金をしている場合、その金融機関に対して受任通知を行うと、その金融機関に対して有するお金の引き落としができなくなってしまう可能性があります。

これは、金融機関が債務者(口座名義人)に対して有する債権と債務者が金融機関に対して有する債権を相殺して、自己の債権回収を図るためです。

こうした口座を給与や年金の振込み先としている場合には特に注意が必要です。

まとめ

弁護士による受任通知によって、貸金業者、あるいは貸金業者から借金回収の委託を受けた業者からの督促は止まります。他方で、受任通知を行うと

  • ブラックリストに掲載される
  • 債権者から訴訟を提起されるおそれがある
  • 保証人等に督促がいく
  • 金融機関に借金をしている場合は口座を凍結されるおそれがある

などのデメリットもあります。

弁護士に依頼する際は、受任通知する前に事前にどのような対処が必要か弁護士とよく相談して決めておく必要があります。

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