自己破産すると家族に影響が及ぶ?どんな影響が及ぶ?
これから自己破産しようとしている方のお悩みで多いのが、自己破産したら家族にまで影響が及んで迷惑をかけるのではないか、というお悩みです。
この点、結論から申し上げますと、自己破産すると家族に影響が及ぶ場合もあれば、及ばない場合もあるといえます。
具体的にどういうことなのか、以下で詳しく解説してまいります。
自己破産によるマイナスの影響(自己破産のデメリット)
まず、自己破産によるマイナスの影響、つまり自己破産のデメリットは、
- ①信用情報期間の信用情報に事故情報として登録され(ブラックリストに登録され)、手続終了後5年~10年は情報が抹消されない
- ②一定の財産を処分する必要がある
- ③破産手続中は資格を喪失し仕事ができなくなる
- ④破産手続中は自由に居住地を離れることができなくなる
- ⑤破産手続中は、破産管財人により破産者宛の郵便物を調査されることがある
- ⑥免責不許可決定を受けた場合、自己破産したことが市区町村役場に通知される
- ⑦官報に公告される
などを挙げることができます。
このうち、④、⑤については破産手続中のみ、かつ、自己破産手続開始の申立てをしたご本人自身の問題ですから、家族への影響はないといってよいでしょう。
また、市区町村役場が自己破産したことを公にすることはありませんし、一般の方が官報を見る機会は少ないと思われます。
したがって、⑥、⑦によって周囲の方が「あそこの家族は自己破産した」と知ることはなく、家族への影響はないと考えてよいでしょう。
問題は①、②、③です。
ブラックリストに登録されることによるご家族への影響
ブラックリストに登録されると、以後、お金を貸す債権者側から「お金を返済していくだけの経済的信用力が乏しい」とみなされてしまいます。
その結果、新たに借金をする、ローンを組む、クレジットカードを作る、誰かの保証人、連帯保証人になるなど、経済的信用力が重要視される場面で取引を行うことが非常に難しくなります。
もっとも、この経済的信用力の有無は個々人ごとに判断されるものです。
したがって、たとえご本人自身が自己破産してブラックリストに登録され経済的信用力が乏しいとみなされたからといって、その家族も同様にみなされるかといえばそうではありません。
つまり、基本的にはご本人が自己破産したからといってその家族の経済的信用力に影響が及ぶことはないと考えてよいでしょう。
もっとも、直接的な影響はないにせよ、間接的な影響は少なからずあります。
まず、ご本人が新たな借金ができない、ローンを組めない、クレジットカードを作ることができないということは、これから先、当分の間は、(借金をして)家族で旅行をする、大きな買い物(家、車、家具・家電などの購入)、分割での買い物(スマートフォン機種などの購入)をするといった「夢」を実現することが難しくなります。
つまり、家族に節約を求め窮屈な生活を強いることになるかもしれません。
また、連帯保証人になれないということは、たとえば、お子さんが奨学金を借りて大学へ進学することが難しくなります(奨学金を借りる際、親が連帯保証人となることが求められるため)。
つまり、自己破産するとお子さんの学業へ影響が及ぶことが懸念されます。
一定の財産を処分することによる家族への影響
自己破産すると破産者名義の一定の財産は処分しなければなりません。
ご本人名義の財産を処分することによる家族への影響は大きいといえます。
まず、家族の生活の糧となる現金、預貯金は、一定額以上は処分の対象となりますから食費、日用品費、固定費等を大幅に節約しなければならないでしょう。
また、お子様のため、将来のために貯めていた学資保険、生命保険金も一定額以上は処分の対象です。
自宅が持ち家の場合は任意売却するか、競売にかけられると、いずれは自宅から退去しなければなりません。
そして、転居先によっては、お子さんの学校の転向、ご本人・配偶者の職場を変えなければならなくなるでしょう。
車についてはローンが残っている場合はローン会社により引き揚げられますし、ローンが残っていない場合でも一定の処分見込額以上の車は処分しなければならないでしょう。
車を処分するとお子様の保育園、幼稚園、習い事への送迎、職場への通勤、週末のお出かけ、買い物などに大変不便となります。
資格を喪失することによる家族への影響
資格を必要とする職業(弁護士、公認会計士、税理士、公証人、司法書士、警備員、生命保険募集員など)は、破産手続中は資格を喪失し、仕事ができなくなります。
仕事ができなくなることで収入が減り家族の生活に影響を及ぼすことになるでしょう。
なお、資格を必要としない一般の会社員の場合は、自己破産したことを理由に解雇されることはありません。
家族が保証人、連帯保証人となっている場合の影響
以上は、ご本人が自己破産したことによる家族への事実上の影響についてご紹介してまいりました。
しかし、事実上ではなく法律上の影響が及ぶ場合があります。それが、家族がご本人の保証人、連帯保証人(多くの場合、連帯保証人)となっている場合です。
つまり、ご本人が自己破産すると、ご本人に対する請求が保証人、連帯保証人である家族へ行きます。
しかも、ご本人が自己破産すると期限の利益を失い、それまで分割返済が認められていたものが、一括返済しなければならなくなるでしょう。
家族が返済できなければ、家族の財産を差押えられる可能性がありますし、場合によっては家族自身が自己破産などしなければならない可能性も出てきます。
まとめ
以上より、ご本人が自己破産することによって家族が影響を受ける場合とは、基本的に、家族がご本人(名義)の財産に依拠して生活している場合といえそうです。
自己破産するにあたっては財産を失うにあたって、どのような影響が出るのか具体的に考えることが必要です。